思いのままにペンでスラスラ

自分の好きなものについて好き勝手に書いたりレビューしたりします。

アニメジャパン2015クリエイター体験講座 加藤陽一先生の脚本講座に行ってきた(主にアイカツ!の話)



3/21、22とアニメジャパン2015に行ってきました。

www.anime-japan.jp

色々なブースを巡ったり、ステージイベントに行ったりと動き回っていたんですが、その中で事前情報の段階から気になっているものがありました。

それが『クリエイター体験講座』です。

クリエイター体験講座 | AnimeJapan 2015



とはいえ僕自身は何らかの「製作」というものに携わったことが全くなく、アニメの総合イベントらしい企画だなという完全に単なる興味ではあったのですが。

 

 

詳しくは後の内容で触れますが、なにせ各プログラムに「宿題」が用意されていますからね。興味本位で参加する人のほうが少数だろってレベルのガチっぷりです。

そんな中に完全場違いクソ野郎として参加させていただいたのが、加藤陽一先生による「『妖怪ウォッチ』『アイカツ!』にみるヒットアニメ脚本術」です。完全に加藤陽一先生ファンのミーハー行動です。


以下、それに関して必死にメモっていた内容等のレポです。

 

まず、別ステージの終了時間による影響と、その後に軽く迷子になった(ちゃんと区切られた小部屋でやってると思ってなかった)ため、30分ほど遅刻して入場。クソザコ。細かく数えませんが、立ち見を含めて100人以上はいた気がする。

 

入ったときは、事前に発表されていた宿題の『妖怪ウォッチ』に関して、実際に提出されたものに対してガチ添削をしてました。

 

■課題1 アニメ『妖怪ウォッチ』第1話「妖怪がいる!」より
ケータは、森の中でガシャガシャマシンを見つけ、ウィスパーの声に”お金を入れろ”と促されます。
*ここからが課題です。
そのあと、アニメ本来の展開とは違い、『ガシャが壊れていることが発覚』する場合、あなたならどのようなコメディーにするか、執筆してください。
そのシーンから、ケータとウィスパーが家路につくまでを書くこととします。

 

ここはあまり細かくメモってなかったので具体的には書けませんが、一つ一つに良かった点や修正点を説明しており、(やはりトンデモない所に来てしまったのではないか……?)と思いつつ聞いてました。


妖怪ウォッチに対する講評でまとめとしておっしゃっていたのが、「妖怪ウォッチという作品は日常に起こる現象が『妖怪のせい』とだという部分がキモになるので、作品世界が現実と乖離してしまうと良くない。アニメとして展開が突飛であっても、キャラクターの心理変化や行動は突飛でない自然なものであるように描く必要がある」ということでした。

 

 

そして半分の45分が経過したところで2つ目の宿題である『アイカツ!』へ。

こちらに関しては講評でなく解答例という形で加藤先生が実際に脚本をライブ作成(もちろんプロットは事前に準備してあって、脚本を書く際にどういう風にやっているかということなんだろうけど)というすごい企画。

 

キーボードを打ちながら話すために手持ちマイクからヘッドセットにチェンジ。

以下、特に断りなく劇場版アイカツ!の内容に関する話が出てきますので一応注意。


■課題2 『劇場版アイカツ!』より
本編では描かれていない『大スター宮いちごまつりを観に来てくれるよう、
大空あかりが神崎美月を説得するシーン』を書いて下さい。

 


課題として出したものの、加藤先生自身はお題のシーンを劇場版に入れようと思ったことは一度もなかったそうです。

その理由が大きく分けて二つあり、

 

・あかりが美月さんを連れて行きたいということは、既に月影さんに美月さん情報を聞きに行った際に語っている

「星宮先輩は、神崎先輩に観て欲しいって思ってすっごく頑張ってるんです。だから、それを伝えたいんです」(小説版より)

 

・衣装が届くかという問題もあり、問題を複数同時進行させると子供が混乱する

→だから、バンジーのシーンで美月さんの方は一旦忘れてもらっても構わないという感じで作った。(その後に説得が行われたであろうことは描かなくても伝わる)

 


ということですが、その上で敢えてこの話を入れるとしたら、ということで実際の劇場版の脚本(第何稿かはわからないけど)ワードファイルを見つつ、お題の該当部分周辺へ(確か48ページとかそんなもんだったと思う)。

 

「まあ、入れるならここしかないよねー」と言ったのが、映画ではバンジーのシーンの次にある、関係者席の一幕で最後に織姫学園長が空席を見つめての「美月……来ていないわね……」という部分の後。

(映画だと、フィッティングルームでいちごたちとドリアカ勢が合流しての「わっしょーい!」に繋がるところ)

 


脚本を書きつつ提出された課題にまとめて講評を入れていく感じで、まず、説得のシーンとして「バンジーが終わってすぐの状況」で書いているものが多かった。とのこと。

しかし、直後だとバンジーの空気に引っ張られて中々説得に持っていけないので、避けて、少し時間が経過したことがわかるような場面として描いたほうがいい。

 

これと繋がることとして、「あかりが美月に自己紹介をするくだり」(確かにTV版含めてそこまでにあかりと美月が会ったことはない)*1を書いたものも多かったが、少し時間が経過していれば自己紹介はその過程で済んでいるとして省略(視聴者側に新しい情報がもたらされる自己紹介でもないので)。

 

ここで状況整理。

美月の心境として、大スター宮いちごまつりの当日であることは当然わかっているし、その日にあかりが自分のもとに来ているわけだから、あかりが何をしに来たのかは当然察しがつく。だから「何しに来たの?」という問いを美月が発するのは鈍感になってしまう。また、自分もライブを観たい状態でありながら自分を探しに飛び出してきたことに対して先輩らしい気遣いを見せる部分を入れたい。

あかりの状況として、いちごが美月と連絡を取れていない状態であることは前日の段階で知っている。また、あかりが美月さんを探すことはいちごに頼まれたことでもない一種の暴走であり、いちごが実際どうしたいのかを言っていないので会っていきなり「来てください」は微妙。(この辺記憶が曖昧なので漏れあるかも)

 

で、時間が少し経った状態のシーンを描くとして場所をどうするか。

前述の通りで、あかりが暴走して来た状態なので、あかりに少し考える時間を与えたい。ということで、美月がジュースを買いにいくというシーンにして時間を少し生む。

場所としては海が見えるような場所。(「あのライブ会場って海の近くだっけ?まあ、このシーンを入れるってなってたら設定を海の近くにしておけば済むか」という話が出たのも「なるほどね」という感じだった)

ここから記憶の限りでザッと脚本の流れを書きます。

 

美月が飲み物を頼んでいる間に『やりたいことリスト』を改めて眺めるあかり。

美月が戻ってくる。

美月「それを頼りに色々なところを探したんだ。根性あるじゃん」*2

美月「いちごのステージは成功するね」*3

あかり「(うつむきながら)星宮先輩が神崎先輩に連絡していないことも知っています。だから私に言えることなんてありません」

美月「……」

あかり「でも、大スター宮いちごまつりを観に来てください」

美月「……っ」

あかり「(顔を上げ、美月を見つめて)今日の星宮先輩はきっと、ぜったいぜったい素敵ですから」

 


記憶力のなさと僕の文章力のなさで、終盤以外、実際に書かれていたプロットの大半は再現できていない残念な感じになってしまいましたが、最後の「今日の星宮先輩はきっと、ぜったいぜったい素敵ですから」まで書き上がった時の会場の「お~~~~!!!」という盛り上がりというか感心のため息はすごかったです。

ラストに「ここでちゃんと上書き保存をしておきます。これも脚本家になる上で大切なことです」というありがたい一言。

 


その後、数分余った時間で事前に来ていた質問に対して答えるという感じでした。
全体を通じて加藤先生の、登場キャラクターや世界観への理解が深いだけでなく、愛情を持って接しているんだということが伝わってきました。

 

記憶が曖昧な部分も多いんですが、せっかく面白い講座を見せていただいたのでその記録を残しておこうかなというリマインド的記事でした。

 

 

(追記)ありがたい記事ありますね……

 

 

 

*1:これについては加藤先生も「みんなホントアイカツ!のことが好きでよく知ってるんだよね」と評していました

*2:「この「根性あるじゃん」って言い回し、美月っぽくて良くない?」と加藤先生の熱い自画自賛

*3:加藤「ここで、(私が行かなくても)まで入れてしまうと、説得しに来たあかりに対して失礼になってしまう」